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日本の正社員は相変わらず滅私奉公か?

多くの日本企業で、プライベートを失う/失わせる働き方がなぜ続いているのか。会社側の人事の仕組みを設計する立場として分析すると、正社員として終身雇用しなければいけないからプライベートを要求している、という理由にたどりつきます。

たとえば、先進国の働き方として明らかに時代遅れだと言える「残業命令」がなぜ発生するのかを考えてみましょう。

雇用契約では原則として就業時間が定められています。会社は当然その時間だけ働くことを要求し、従業員はそれに応えます。しかし一般的には定時で帰ることはないでしょう。連合総研が2009年に調査したデータでは、残業させていることを隠したいはずの企業側の回答でも「まったく残業しない(残業時間が0分)」としている会社の割合は28.6%だけです。一方、アメリカやフランス、韓国などでは過半数の会社で残業が0分です。
(NIKKEI STYLE 8月10日)

残業命令がなくならなくとも、長時間労働の是正が進んで滅私奉公はあらためられる流れにあるが、一方で会社への忠誠心を強化する傾向がうかがえる。クレドの導入だ。

本来、クレドの目的は忠誠心の強化ではないが、朝礼などで唱和する会社を取材すると、クレドの使用は思想教育と言えなくもない。

取材先で資料としてクレドを渡されることが多いが、各社のクレドとも真っ当な内容で、偏ったことは書かれていない。この内容が周知徹底されれば健全な組織風土が形成されるだろうと思えるクレドばかりだ。

しかし、それでも唱和という行為に抵抗を持つ社員は少なからずいるだろう。そのうえ日常業務の折々に「その考え方はクレドとは違う」と指摘されたら、途端に宗教臭さを感じるのではないか。とくに中途入社をした社員は、前職とのかい離に違和感を覚え、それが限界に達すると退職に至ってしまうのが通弊だ。

会社経営に忠誠心は必要だが、自然に愛社精神が湧いてくるような取り組みが好ましい。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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