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固定残業代の乱用目立つ

いくら残業しても残業代が増えない。
そんな疑問が浮かんだら、自分が「固定残業代」で働いているかどうか確認したほうがよい。固定残業代は、残業代の額をあらかじめ一定額と決めて支払う方法だが、事業主に乱用されると、長時間労働や賃金不払いに直結してしまい、最近トラブルが増えている。

(中略)

固定残業代という制度が乱用されるのはなぜか。中小企業の乱用が多く、人件費をなるべく抑えたいと考える悪質な例も目立つ。
加えて、企業と働く側双方から相談を受けている特定社会保険労務士の須田美貴さんは「給与計算の手間を省こうとしたり、労基法を知らなかったりする中小企業の経営者も少なくない」とは話す。
(日本経済新聞 6月13日)

中小企業の乱用が多いという指摘だが、「業務手当」などの名目で残業代を固定化するのは、そもそも企業側に、人件費を抑制したうえで際限なく働かせようという意図があるからだ。いわば固定残業代は乱用を促すような費用なのである。

固定残業代が支給される企業で、残業時間が固定残業代分を下回ることはまずない。大幅に上回っているのが通例だ。かりに残業代を青天井で支払うと経営が持たないのなら、業務のあり方を見直して長時間労働を抑制するか、あるいは在宅勤務を導入して身柄の拘束から解放するなどの改善策が必須である。

過重労働を強いたいが、人件費は不当に抑えたいという“ブラック意識”が根底にある限り、固定残業代をめぐるトラブルは絶えないだろう。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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