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在宅勤務導入48% 検討中25%―毎日新聞調べ

毎日新聞は主要121社を対象に働き方改革に関するアンケートを実施した。それによると、在宅勤務について「導入している・導入を決めている」と回答したのは48%(58社)とほぼ半数に上った。「検討している」の25%(30社)と合わせて7割を超える。実施企業からは子育てや介護中の社員の意欲向上や離職防止に役立っているとの意見が出ている。

政府は「ワーク・ライフ・バランス」(仕事と生活の調和)の観点から在宅勤務の拡大を目指しており、昨年6月には、在宅勤務の導入企業の割合を2020年度には12年度(11.5%)の3倍にするとの方針を閣議決定している。主要企業では既に政府目標の水準を超えていることがうかがえる。

住友化学は「育児、介護で短時間勤務を行っていた社員が、在宅勤務でフルタイムで働くなど、就業機会の拡大につながっている」と評価。導入を検討中の企業の多くも「通勤時間の削減による効率の改善」「交通費やオフィス代のコスト削減」など企業と社員の双方への利点を期待している。
(毎日新聞 5月3日)

在宅勤務には介護離職防止の目的があるが、介護先進国である北欧各国には介護離職という現象がないという。
厚生労働省の医療介護政策にも関わっている研究者によると、介護離職が発生するのは家族介護を前提としているからで、北欧には家族介護の文化がないそうだ。在宅介護サービスが普及しているので、自宅で暮らせる間は在宅サービスを利用し、重度化したら施設や病院に入るという療養体制になっているのだ。

家族観も日本とは異なるようで「長年連れ添った夫婦は家族。独立して生計を営む子供世代は親族」(研究者)という関係が形成されている。日本ではなじみにくい家族観にも見えるが、入院費用などで子供の世話にはなりたくないという親は、日本でも珍しくない。

日本でも在宅看護および介護サービスの整備が急がれているが、厚労省が制度化するサービスが増えるつど人手不足が加速される。人材紹介会社にとっては市場が拡大して喜ばしいだろうが、紹介料の財源は診療報酬と介護報酬だ。いびつな構図が出来上がりつつある。

小野 貴史

著者情報:
小野 貴史

1959年茨城県生まれ。立教大学法学部卒業。経営専門誌編集長、(社)生活文化総合研究所理事などを経て小野アソシエイツ代表。25年以上にわたって中小・ベンチャー企業を中心に5000人を超える経営者の取材を続けている。著書「経営者5千人をインタビューしてわかった成功する会社の新原則」。分担執筆「M&A革命」「医療安全のリーダーシップ論」

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