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JAC決算に見る、人材紹介会社が目指す方向性

最近HROGさんの人材紹介会社決算分析記事が結構ストライクでハマっている。
元来IRがあまり得意ではなく、ビジュアルグラフィックス的にも褒められたものではない人材関連企業の決算情報を、視覚的にもわかりやすくまとめている。

直近では人材紹介では国内3位(リクルートキャリアのエージェント部門、インテリジェンスの紹介部門+テンプスタッフキャリアに次ぐ)のJACジャパンに関する決算速報記事「株式会社JACリクルートメントの決算分析(2015年12月期)」があったが、内容的に少々補足すべき事案が多いのでブログエントリーする。(以下の画像はHROGより)

決算HROG

まず、決算の数字に関しての私なりのレビューをすると、以下の通りである。

売上高、利益ともに昨年対比で順調に成長している。売上は120%成長で100億円の大台を突破している。利益も30億を突破し堅調路線を維持している。しかし人材業界全体が120-130%成長しているので、特段JACがインパクトある実績を残したわけではないと考える。
一般的に組織、売上規模が拡大すると成長軌道は鈍化するが、人材紹介市場のボリューム(3000億円程度)と、業界内のJACのシェアを考えると、200億円サイズまでは成長スピードが鈍化するとは考えにくい。

seisansei

次に、生産性である。この点に関しては、単にJAC単体というよりも、業界全体の課題について少々考えてしまった。

JACのコンサルタントは500人体制である。500名が一通型のコンサルタントとして、RA/CA双方を担っている。昨年度の売上高112億円を500人で割ると、2240万円/年間という数字が出る。1年間常時500人体制ではなく、徐々に増えて年末に500名体制となったので、450人計算としても2488万円/年間である。月次の生産性が200万円程度のため、単純計算でも2400万円/年間というのは大きく外れた数字ではないだろう。

人材業界ではリクルートエージェントもインテリジェンスも1人あたりの生産性は2000-3000万円の間である。これは以前のブログ(リクルート上場 さてハイエンド人材紹介セグメント市場はどんな状況か?)の中で、コンサルタント以外のバックオフィスなど含めた1人あたりの生産性(1500万円/1人)からの類推であるが、JACも基本的には同様の状況である。そしてだいたい給料は400-600万円/平均が相場と言われている。

人材業界を志す学生、異業種の方々はまず業界大手の3社を見て、当業界のポテンシャルを考えると思う。この大手3社でコンサルタントの給料が400-600万円だという事実を前にすると、優秀な人材がどんどん集まってくるようにはやはり思えないのである。メガバンクや総合商社に行けば、30歳で1000万円越えは間違いない時代で、頑張っても会社平均が400-600万円の世界は見向きもされないのだ。多分リクルートはもう少し高いが、コンサルタントで1000万円ゾーンはなかなか狙いにくいと思う。

価格体系が異なるので、敢えて比較したところで、意地悪にしか見えないが、リテイナーサーチの世界では年間売上6000万円で1人前、極端に給料の低い会社がいくつかあるが、概ね800-1200万円程度の報酬水準となる。1億円プレイヤーは希少種だが、確定申告ラインを一般的には超えていく。この水準であれば優秀層にも人材業界を選ぶモチベーションが湧くように考えられる。

人材業界がこれまで以上に優秀な人材を集め、基幹産業として発展するためには、少なくとも大手3社が同水準まで成功報酬モデルであっても到達してほしいと強く感じた。

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三上 俊輔

著者情報:
三上 俊輔

2006年、早稲田大学法学部(専攻労働法)を卒業後、独立系エグゼクティブサーチ会社であるサーチファーム・ジャパン株式会社に入社。柔硬幅広い業界の部門長クラス以上の経営者獲得、スペシャリスト(エンジニア、会計士など)採用を実現。 2011年、サーチファーム・ジャパンより組織戦略及び技術コンサルティング事業を分社化し、ジーニアス設立、代表取締役就任。 理論と実践のギャップを埋め、健全なる雇用環境の発展に微力ながら貢献すべく、スカウトその他様々なプロジェクトを戦略的に遂行している。

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